最終更新日: 2024/05/18

匿名劇壇ファンクラブ

匿名劇壇の10年を振り返る座談会 パート1


※ 北村…匿名劇壇舞台監督・演出補佐スタッフ 北村侑也

※ 片山…匿名劇壇制作スタッフ 片山知音


〜匿名劇壇の始まりの話〜

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杉原  まず最初に、匿名劇壇はどんな経緯で結成された劇団なんですか?僕実はあんまり知らなくて、それを聞きたいなと思って。どんな経緯で、なんでこの人々が集まったんですか、福谷さん。

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福谷  まず近畿大学2年生の頃に勉強会っていうのが…勉強会って2年生の頃?

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佐々木 2年生。

福谷  2年生に勉強会っていうので…勉強会ってなんや?

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石畑  その…スタッフワークを学んで、で、それを実践するために学生たちが公演をやるという…。

福谷  そう、それで俺が初めて作演出を担当したそのときに、誰? 松原、芝原…

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松原  佐々木。

福谷  ともう1人。で(お客さんに)見てもらって、そこで楽しいねとなりました。劇を作るのが。で3年生の時に同じく佐々木、松原、芝原ともう1人に東を加えて、匿名劇壇と名乗って、5月…5月に2011年5月に『HYBRID ITEM』を近畿大学で上演した。

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佐々木 うん。

福谷  それが成り立ちやな。

佐々木 そうね。

杉原  その、別にオーディションとかじゃなくて、福谷さんが「東さんやらへん」って感じで声かけて?

福谷  そう。東って俺が言ったっけ?

佐々木 福谷と喋ってて、「東呼ぼう」って。

福谷  どっちが積極的?

佐々木 福谷。

福谷  あ、じゃあ俺が呼んだんや。

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東   連絡くれたのはふくちゃん。なんか私がそん時なんで誘ってくれたんって聞いたとき…

松原  何か、踊れる可愛い子がいいって。

東   私が聞いたのは、藤原くんっていうダンスできる子かどっちかやったっていう…。全然タイプ違うんやけどね。

福谷  え、覚えてない。

東   だからもしかしたら私じゃなくて、藤原くんがいたかもね。

杉原  それ入団しない?じゃなくて、舞台でない?的な誘いやったんですか?

東   「匿名劇壇という劇団にしようと思うねんけど、入ってくれへん?」みたいな。入団の誘いだったような。

松原  へえ〜。

福谷  これも話しようと思ったんやけど、ゆっこ多分認識ちゃうやんな。

松原  違う。

福谷  俺今でも忘れられへん。その、『HYBRID ITEM』上演した次にウイングフィールドで『PUNK HOLIDAY』っていう作品を上演したんやけど。その話を進めたときに、まこちんから「ゆっこが、「私匿名劇壇に入った覚えないねんけど」って言ってる。」って聞いてさ。

松原  嘘ぉ。そうは言ってないと思うんやけど!

佐々木 言ってた言ってた。

福谷  それ聞いてすげえ怖かった。

松原  違う違う。なんか匿名劇壇って劇団になりましたって話を聞いたのが『HYBRID ITEM』の本番直前やって…。『HYBRID ITEM』って作品を製作しよう!みたいな話のとき、劇団名なんてなかったよね?

福谷  付いてた付いてた。

松原  最初から?

福谷  それはもう、どの段階かわからんけどチラシ作るときはついてる。

松原  そう。チラシ作る時ぐらいに急に劇団名の話になって、「あれ、これ劇団なんや」って。一個ずつ公演やってるだけって思ってたから。いつの間にか劇団員になってたって感じ。

佐々木 俺が勉強会に出た時は、声かけられたのが3番目とかやってさ。先輩1人誘って、その人が駄目で、また別の人に声かけて、駄目やって…。苦渋の選択が俺(笑)その時、めっちゃ暇やったから「ああ、出れるよ」って。俺は福谷が一番最初に誘ってくれてると思ってるから、やったぜと思ってたんやけど、よくよく話聞いたら、なんかすげえ最後やって。

一同  (笑)

松原  「まこちん誘っても大丈夫かな?」みたいなちょっとした相談あったよね。

福谷  そうやっけ?

松原  うん。「正直まこちんのハマリの役じゃないけど…、あいつの性格なら大丈夫か?」みたいな話してた。

福谷  大物扱いか(笑)

松原  で、まあいいんちゃう〜?って。

佐々木 そんな化け物やった?

杉原  え〜と、匿名劇壇ができたのは、みんなが大学2回生のときだったと?

松原  3回生かな。

福谷  3回生の時に『HYBRIDITEM』で、その時に名前(劇団名)がついたの。

北村  勉強会は2回生。

松原  勉強会公演は初めてに含む?

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北村  「匿名劇壇」ではないってことですか?

福谷  そう。

松原  そっか、でも、ふくちゃんが書いた戯曲って勉強会の『THE EGG』あれが1作目ってこと?

福谷  そう考えたらすごいね。

松原  すごい!


〜劇団名の由来の話〜


杉原  匿名劇壇の名前の由来ってなんなんですか?

福谷  俺これさ、なんかいろいろ言ってるけど知ってる?

佐々木 知ってる。

杉原  俺知らない。

松原  知ってるけどあんまよく覚えてない。

佐々木 なんか「匿名劇場」にしたいって最初言ってて。

松原  あ!言ってた!迷ってた!

佐々木 状況劇場、みたいな。劇場か劇団か迷ってると…。

松原  最初チラシ作ってる時、劇場って書いてたよね。

福谷  書いてたかも。

松原  で変えて、劇壇にしたと?

佐々木 俺めっちゃ文句言ったもん。劇場はダサいって。劇場いやや!って。

福谷  由来は?

佐々木 ユライ? 劇団の…YURAI?

一同  (笑)

福谷  その話やろ。

佐々木 なんか言ってたな。劇壇の壇は…どっかに書いてなかった?

福谷  書いてたっけ? なんか俺、色々言ってるけどみんな知ってんのかな。

東   なんか『文壇』の『壇』と同じ意味で広い意味で、舞台上で匿名性を得た役者たちの仮面舞踏会…みたいな。

福谷  書いてた!

東   『HYBRID』の当パン? かどっかに書いてた様な気がする?

松原  (当日パンフレットを読んで)【匿名劇壇は会社「カンパニー」ではなく社会「ソーシャル」である。すなわち密な空間ではなく開かれた空間。舞台上で役を持つことにより匿名性を獲得した人間の生きる場所である。】

福谷  すげーな。

佐々木 すげーな。

松原  かっこいいこと書いてる。

福谷  少なくともそう、所謂劇団にするつもりがなかったから団の字より広くしたのよ。軍団とか画壇とか東が言った通り。だからその名残で壇の字がこれになった。

杉原  成る程。劇壇という言葉は【演劇に関係のある人々の社会。演劇界。劇界。】っていう意味がありますね。

福谷  そう。


〜作風の話・もう一人の男の話〜


杉原  で、匿名劇壇が出来たわけですけど、作風がメタフィクションじゃないですか。

福谷  うん。

杉原  それは、なんでそういう作風になったんですか?メタフィクションを多く書くっていう。

福谷  多分それは俺が単純に、なんやろ、「こういう物語を書きたい!」って人じゃなかったから。でもなんか書きたいっていう気持ちだけがある。

杉原  うん。

福谷  そうすると、なんか自分の身近なところから書くしかなくて、自分の身近なところってなんだって考えたらやっぱ劇団とか演劇とかそういうことがテーマになってしまったから。

杉原  で『HYBRID ITEM』が旗揚げ公演で上演されるわけですけども。当時は碇さんという人がいて、今はいないんですけど、この人俺会ったことも喋ったこともなくて、どんな人なんですか?

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吉本  喋った事ないん?

石畑  会ったことはあるんちゃう?

吉本  一方的に見てるんか?

杉原  一方的に見たけど会話したことがなくて。

吉本  そうなんや。

杉原  いつ入っていつ辞めちゃった人なんですか?

福谷  最初からおって卒業を機に。

杉原  就職で?

吉本  『PUNK HOLIDAY』が最後?

佐々木 うん。

福谷  今テレビ屋さんやってるよ。


〜『HYBRID ITEM』の話〜

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福谷  『HYBRID』は全員観てんの?

石畑  観ました。

吉本  観ました。

松原  へー。

東   モネちゃんはそりゃ「?」って感じよね?

片山  はい(笑)

佐々木 えっ、杉原観てんの?

杉原  僕も観ました。このとき初めて匿名劇壇って人達がいるってことを知って。

福谷  まぁ、「いる」っていうか「現れた」

一同  (笑)

佐々木 現れた。居ては無かった。

杉原  すごい面白いなって思ってた。

吉本  下級生にとっては衝撃的で。

福谷  へー。

吉本  なんか私の一個下とかも盛り上がってて、「俺らの学内にこんな面白いことやる人がおるんや。やばー。」みたいな。

福谷  へー。

吉本  それがなんか、ちょっとこう、プチお祭り感?はありましたよね。

福谷  誰か先輩からアメトーークより面白いって言われたわ。

石畑  めっちゃ凄いな。

佐々木 どの回と比べたんやろ。(笑)

北村  吉本近辺でお祭り感あったんや。(杉原に)あった?

杉原  うーん、でもなんか面白かったし。

北村  面白かった。でもみんなでワーみたいなの俺の周りでは無かったような。

吉本  あっそうなんや。すいません。

杉原  謝る事はないよ。

松原  でもやってる側もなんか衝撃的に楽しかった。

佐々木 楽しかった。

東   無茶苦茶楽しかった。

佐々木 稽古期間がめっちゃ長かったんよ。

松原  めっちゃ長かった。

福谷  3ヶ月やってた。

石畑  長すぎ(笑)

佐々木 後半についた演出なんて蛇足なのよ。稽古中俺らが飽きて、で稽古を見てる福谷も飽きてるから付け足し付け足しになって、味濃くなって段々…。

片山  そうなんですね(笑)

松原  上演時間まぁまぁ長かったっけ?

福谷  いや、90分ないよ。

松原  そうなんや!

東   めっちゃ面白かった。

杉原  初舞台では無いんですか?

松原  初舞台では無いよね。

杉原  でもほぼほぼ未経験でしょ?大学からみんな演劇始めてるから。

松原  まぁ2作、3作目くらいかな?

東   授業公演とか入れたら。

佐々木 あれ覚えてる? 『HYBRID』で2階からドンってカバン落として音を鳴らしたいがために、俺が背負ってるショルダーバックにめっちゃ重い鎖ずっと入れてて…。

松原  結構長い鎖ね。

佐々木 長い間、俺、鎖を背負いながら芝居して、セットの2階から落として。ただドンって鳴らしたいだけで。

松原  いい音鳴らしたいだけでな。

北村  あれは小道具が印象的。なんか全員テーマカラーみたいなのしてませんでした?

松原  黄色。黄色の…なんやっけ?

佐々木 俺はなんか黄色のヘッドホンみたいなん。

福谷  全部黄色。黄色のヘッドホン。俺は単語帳やねん黄色の。

松原  えっ単語帳? そんな地味なやつやったっけ? え、ゴーグルは?

福谷  あれは黄色とは別やねん。

東   ゴーグル?

松原  あたし軍手。

東   いやいや、ちゃうちゃうちゃうリボンやん。

松原  (笑)

東   なんでやねん。

佐々木 ゆっこなにを言うてんの?(笑)

松原  人のだ(笑)芝原が軍手や。

福谷  頼むわ。

松原  あはは、私リボンちゃんやった。

福谷  東は?

東   私、パーカー。

一同  あー。

松原  そだそだ。

佐々木 みんな、なんで黄色なんって聞いたことある?福谷に。

松原  なんか知ってる。なんやったっけ?

佐々木 「最先端色やから」

一同  (笑)

松原  そうそう言ってた。めっちゃ覚えてる。

佐々木 色に最先端なんかないから。

松原  なんかチラシも黒と黄色にしたよね。それが最先端の組み合わせやとか言って。

佐々木 最先端の配色。

松原  「ほら、蜂もこの色やろ?」みたいなこと言ってた。

佐々木 言ってた。

福谷  そうなんや。

杉原  上演してみての手応えって感じましたか? 観客からの。

福谷  結局観てんのは学内の人たちやから、社会が開けたとは思わんかったけど。やってて楽しいってのはあったな。

杉原  だから第2回公演とかに続いていくわけですね。

福谷  そう。今までやってきた部活とは比べ物にならんかったからな。

佐々木 確かに。

松原  なんか(大学教授の)松本さんからメール来たやんな?

東   来た。なんか。

松原  「今まで見た学生製作の舞台の中で1番だ、教師辞めようかと思ってたけど今日救われました。」みたいな。

石畑  (笑)

佐々木 今でも覚えてるもん、扉開けて出てきた松本さんが「お前ら最高だよ。」って言って。

一同  (笑)

東   覚えてる覚えてる。 あれは印象的やった。

杉原  それで次の公演に繋がるんですね。

佐々木 そうですね。


〜『PUNK HOLIDAY』『終末の予定』の話〜


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杉原  『PUNK HOLIDAY』は学校じゃなくてウイングフィールドで上演されたんですね。

松原  そうです。

杉原  それも旗揚げ公演と同じメンバーですね。

佐々木 そうです。

杉原  そして『終末の予定』。これは1学年下の吉本さんが客演で出演してましたね。

吉本  そうね。

福谷  俺らもう卒業間近やってん。

松原  そう、3月。

杉原  吉本さんは、「出てくれへん?」って福谷さんが言ったんですか?

福谷  俺が積極的に思ってた。俺あこちゃんいつから言ってたっけ?

佐々木 めっちゃ前。(学内授業公演の)『十二夜』とか『屋上の人』のちょっと前くらい? あこちゃんが金髪時代。

吉本  あっじゃあ『十二夜』。三回生の授業公演。

福谷  その前何やってる?

東   文化祭のやつ見て、「あこちゃんがめちゃくちゃいい!」みたいなこと言ってなかった?

福谷  何? 文化祭って。

吉本  文化祭なんて1回生ですよ?

東   あれ? ちゃうっけ?

福谷  でもそう。でもそうやわ。

東   アリスの…。

吉本  あれ見て?

東   アリスの時なんて「あの子いいのに!」みたいな。

松原  へー。

佐々木 めっちゃ早かった。俺があこちゃんの存在知らん時から、「吉本さんっていう人がおって」みたいなん言ってた。

東   それを見て無茶苦茶褒めてた様な気がする。

吉本  一回生のその舞台は初舞台でしたよ。

福谷  あれダブルキャストじゃなかった?

吉本  そうです。

福谷  で、あこちゃんがメインじゃないほう見てんねん多分。

吉本  あれ(笑)

石畑  ってことは僕がメインの方見てるんですね。

吉本  ほんまや。

福谷  ……お前の事なんかマジで覚えてない。

一同  (笑)

松原  扱いの違い。

北村  僕も出てます。

福谷  北村も?

北村  メインで出てます。

吉本  ほんまやほんまや。

佐々木 ふーん。

松原  まさか誰も覚えてないとは。

福谷  正直あこちゃんも覚えてないけど。『十二夜』の時にはとっくに知ってるから。

佐々木 『十二夜』の時は福谷が、「杉原と吉本さんがいいから見といて」って言ってて。

東   (杉原に)えっ『十二夜』出てた? 『屋上の人』じゃない?

杉原  一応ちょっとだけ出てました。

東   『屋上の人』の時にすでに言ってた。

佐々木 …石畑見てみ?

石畑  …なんか凄い悲しい気持ちになってきた。

松原  石畑の名前一切出てこぉへんな。

東   まだちょっとターンじゃないかな。

石畑  (笑)

松原  大丈夫大丈夫。後々来る。

一同  (笑)

東   まず終末の予定の話か。(杉原に)声では出てたもんな?

松原  あっ、そうや杉原も出てる。

杉原  なんかラジオから流れてくる声でちょっとだけ。

佐々木 【光と手と手を繋ぐテレビ】

福谷  よぉ覚えてんな。

松原  うわー懐かしい。

杉原  その録音をした時に初めて東さんと出会って。

東   あの、音響編集室で録ってたんやっけ?

杉原  そう、なんか、その時めちゃくちゃ緊張してて。その時福谷さんともあんま喋ったことなかったから。

福谷  そうやな。

杉原  (録音、録り終わって)こんな感じかってなったときに、その部屋にガラガラって東さん入ってきて、なんか用事してすぐ出ていきはって。でも俺はなんか、挨拶もできひんし、なんやろ。挨拶したらいいのに目も合さずに。

東   ぼんやりとしか覚えてないわ。

杉原  東さんが1回出て行こうとして扉閉めたんやけど、またガラって開けて「東ですー。」って言ってくれて、こっちも「あ、杉原と言います。」って。 そんな感じの出会いでした。

一同  へー。

杉原  でも他の人の初めての出会いってあんまり覚えてないかも。

松原  そう、私はその時まだあんまり杉原の存在知らなかったと思う。

福谷  え、終末の時?

松原  うん、『終末の予定』の作中で声使われてる時は、その声の杉原ってゆう人が誰かあんまり繋がってない。うん、まだ出会ってない。

杉原  いつ出会ったんでしたっけ?

松原  杉原が初めて参加した『気持ちいい教育』じゃないかな?

杉原  あ、そこか。

福谷  じゃあガッツリ参加ってなってからやな。

松原  そうそう。


〜Space×Drama『気持ちいい教育』の話・石畑の話〜

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杉原  『終末の予定』が2013年の3月で、
『気持ちい教育』が2013年5月なんですよね。

一同  すぐやん!

杉原  すぐ。2ヶ月後にはやってて。

福谷  すごいやん。

佐々木 すーごい!

松原  え、でも結構稽古ちゃんとやった思い出じゃない?

佐々木 どんなスケジュールなん!

石畑  今じゃ考えられへん。

東   よくやってたなー。

杉原  で、その公演に僕、杉原と石畑が出演してますね。客演として。

松原  お、石畑きた。

佐々木 石畑登場や。

福谷  だから、石畑は、唯一、自分から…

石畑  そうなんですよ!

福谷  やねんな。

石畑  今みんなの話ずっと聞いてて、みんな誘ってもらってて…俺だけやな…って。

一同  (笑)

松原  いいやん、最高やん。

石畑  まあね。(笑)

吉本  私が『終末の予定』出る時にすごくて。「匿名出んの?! な、匿名出んの?!」って。

一同  へー!

石畑  当時僕は大学のDRYBONESっていう劇団に入ってたんですけど、それを辞めたところで。「あーこれ、演劇続けて行くんやったらこの劇団に入らないと、僕はたぶん演劇を続けないな。」って。

吉本  えー、すごい。

石畑  だから、まあ、思いっ切り押して入りましたよね。

福谷  あの、忘れもせん。あの飲み屋。

石畑  あの、あれでしょ、

北村  ウッドビレッジ。

福谷  そう!ウッドビレッジ!の2階で、石畑が血走った目で。「福谷さぁん、やらしてくださいよぉ。」って。

一同  (笑)

松原  え、それは『気持ちいい教育』の前の話?

福谷  そう。前。で、ほんまにそれがあったから呼んだもん。

佐々木 皆メール来たの覚えてない? 「石畑がすごくて、断ったら殺されるかもしれへん。」って。

一同  (笑)

松原東 きたきた!

石畑  いや僕、どんな人間なんですか。

佐々木 「だから、出してもいいかな」って。

東   そうそう、きたきた。

佐々木 だから「いいよ。」って言った気がする。(笑)

北村  『気持ちいい教育』の時のイッシー、生き生きしてたもんな。

石畑  あー、楽しかったねー。めちゃめちゃ緊張したけどね。

佐々木 あと、石畑脇腹骨折事件ね。

東   そうそう!

吉本  え?!

佐々木 金属バット振り上げるシーンがあって、稽古中、バット振り上げた瞬間に石畑固まって動かんくなって。

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吉本  え!?

佐々木 そっからそのまま長机に寝転ぶってゆう。

一同  (笑)

佐々木 なんか言ってくれたらいいやん。「痛い。」とかって。

東   それ通し稽古中で、私は教室に入ってくるシーンがあるから外で待ってて。入り口の窓から「あ、ぼちぼち出番やな」って見てたら教室内で芝居中の石畑が急に止まったから、外で「えっ…?」って。これなんか新しい演出プランかなって。

石畑  いや、なんかほんまに喋られへんくて。このレベルの痛みは初めてやな…って。

福谷  あ、あんとき痛かったからなんや。(笑)

石畑  そう俺、あ、これ喋ってもヤバイし動いてもヤバイなって。

片山  え、振りかぶっただけで折れたんですか?(笑)

石畑  そう!振りかぶっただけで。 肋骨、結構弱くて。

松原  どこが痛いん?って聞いても「…うぉっ…す…。」としか言ってくれなくて。

一同  (笑)

佐々木 そう!言わへんねん。

福谷  情報がな。

松原  そう。「え、救急車呼ぶやつ?!」って聞いても「うっ…っす…。」って。

佐々木 たしか大学の医務室行ったよな。お母さん迎えに来て、お母さんに車椅子押されながら帰って行った。

石畑  そうそうそう(笑)

福谷  あれ、それそんな大事に至らなかったんやっけ?

石畑  そうですね。病院行って肋骨に軽くヒビ入ってるってなったけど、結局肋骨って治療のしようがないんですよね。だから固めて痛み止め飲んで、出演した。

福谷  あ、じゃ全然…。

石畑  そう。全然治ってない。

松原  たしかに、あんなことあったのに普通に本番出演してたもんね。

石畑  やってましたね。痛み止めのおかげ。

東   あの時は唐突の出来事すぎて、嵐のように石畑が帰宅したから、どう受け止めたらいいのかわかんなかったな。そう、私当時、石畑が一番共演したい後輩やった。

石畑  えー。

東   なんか誰と共演してみたい?みたいな話をふくちゃんとしたんやったかな?なんかいいなって思ってる後輩いる?って聞かれた時に「あ、石畑がいいと思う」って。

松原  へー!

東   すごい石畑押しやった。DRYBONESとか観て面白いなって。

松原  よかったね。

石畑  …嬉しいですね。(笑)


〜初の成功体験の話〜


杉原  Space×Dramaはこの作品じゃないんでしたっけ?

福谷  これこれ、『気持ちいい教育』。

杉原  これでSpace×Drama2013の優秀劇団に選出されたんですよね。これが劇団として公に大人の人から評価してもらった初めての出来事やって。俺は正式に入団してなくて客演やったけど、すごい嬉しかったのを覚えてます。

福谷  そう、だから、『PUNKHOLIDAY』をウイングフィールドでやった時には大学外の場所でやる初めての公演やったけど、なんか社会に開けた感じが全然なかってん。あれ?これって誰が観たんかな?って。 でも、その『気持ちいい教育』で賞を貰った時は、なんやろな、取れると思ってたんかな? あれ。 「匿名劇壇!」って発表されるわけ。そん時に、ドゥルルルって鳥肌が立つくらい嬉しくて。

佐々木 あれ以上の成功体験はない。

福谷  ここで他者から評価してもらえたってことがその後のモチベーションにすごい繋がったな。

松原  ふくちゃんが渡される瞬間を匿名のメンバーと客席から観てて。
その瞬間めっちゃ覚えてる。 賞状渡す人の周りを囲むように代表者が座ってて。渡す人が「優秀劇団は…」のところで1回ふくちゃんに背中むけて、「匿名劇壇!」の瞬間にクルって振り向いて渡した。

片山  へー!

松原  その瞬間、客席にいるメンバー皆で「うぅわぁっ!」って。

佐々木 感極まったもんな。

松原  あれは嬉しかったね〜。

石畑  へー、俺おらんかったからな…。

福谷  え! 石畑現場おらんの!?

石畑  僕おらんのですよ…。

東   あたしもおらん。

福谷  あたしもおらんの?!

東   そう、たしか予定あって。

佐々木 だから石畑は授賞式の後に合流して。

石畑  いやー、だから今の話聞いたら、絶対おったらよかったなって思いますね。

東   おったらよかった。


〜Space×Drama『気持ちいい教育』・入団前の吉本・石畑・杉原の話〜


福谷  あこちゃんはなんで『気持ちいい教育』出てないの?

吉本  …。 劇団員でも、なんでもないから。

一同  (笑)

福谷  怖ー。(笑)

佐々木 冷たー。(笑)

吉本  あ、でも、覚えてないかもしれないですけど、その作品で手紙を読む声だけ録音させてくれって言われてて。

福谷  ほう。

吉本  で、あたしは別の舞台が同じ時期にあって、そっちに出るけど声だけならいけますよって福谷さんと直で連絡取り合ってたんです でも、この日ね って決めてた日の前日に「じゃあ、明日お願いします。」ってライン送ったら「え? 明日?」みたいな。

福谷  俺が?

吉本  そう。「明日? え、何やっけ?」みたいな。

福谷  やば。

吉本  で、「ごめん、予定入れちゃったからもう無理。」って。
で、それ以降2人の予定が合わなくて、「ごめんじゃ無理だ」ってなって、なくなったっていう。

東   へー。

福谷  まじか。まったく知らんかった。 知らんかったって俺のことやけど。

一同  (笑)

吉本  そう。でもその時に、じゃあ私以外の誰かがその手紙読んで、その声が流れるんかな って思ったらすーっごい嫉妬して。

松原  へー。

吉本  でも結局本番では流れなかったんですよね。

福谷  なかったな。 そのシーン自体。

吉本  そう、なかったからまだ心の平穏が保たれたなって。

福谷  あこちゃんにアプローチはかけてんねんな。 じゃあ。

吉本  そうですね、読んでーみたいな。

佐々木 ちょうどその『気持ちいい教育』終わりあたり。石畑が最初は匿名劇壇出してくれ出してくれの圧が凄かったけど、その後は入れてくれの、匿名劇壇入団させてくれの圧をかけるように。

石畑  そう、たしか呑みに行ってその話した次の日、朝から大学の授業受けてて、その授業の合間にずっと福谷さんに電話して。

松原  えー!

石畑  「福谷さん、あの話どうなりました?」とかって。

吉本  すごい!

福谷  おー!

東   何で(福谷が)おー!なん。

福谷  まったく覚えてない!

片山  (笑)

松原  たしか『気持ちいい教育』の稽古帰り道でも、ふくちゃんとまこちんが杉原に「入らへんか?」って言ってて。

佐々木 そう、俺がずっと言っとって。

杉原  俺はその時、就職するか演劇を続けるかでかなり悩んでて。だいぶ入らん方向だったんですよね。

松原  そうそう。 で、それが行われてる横で石畑が「俺は、入りますよ?」ってめっちゃ言ってたん覚えてる。

一同  (笑)

吉本  可愛いわー。

佐々木 「入りますよ?」って言ってたんもんな。(笑)

石畑  (笑)

佐々木 で、杉原は悩んでるって言ってて。「いやでも、一緒にやろうや。」って、連絡とってて、でも「ちょっと待ってください、ちょっと待ってください」って。 で、Space×Dramaとった次の日に「おんなじ船に乗りましょう」ってラインがあって。

松原  えー!?

一同  かっこいいー(笑)

福谷  おんなじ船乗りましょう?

佐々木 まじやで。

杉原  いやでもなんか「現金な奴やな」みたいなこと言われました。

佐々木 賞取った瞬間やったからな。

一同  (笑)

佐々木 こいつもし取らんかったら入ってへん。

杉原  でも取ったから。「この劇団はいけるぞ」 と思って。で、俺は入るわけですけども…。

松原  まこちんがアプローチしてたってこと?

杉原  うん。

佐々木 俺がずっと言ってた。

松原  へー。 知らんかった。


〜大学からの進路の話〜


杉原  で、みんなはこう、歳が1個上やから1年前やけど、就職する・しない問題ってどうでした?悩みもせずに、劇団を続けていこうと思ってましたか?

松原  どうやったっけ?

佐々木 僕、中退なんで、僕は…。

杉原  そんなにみんな悩まずに?

福谷  俺も、もう、生徒によると思うけど。俺は自分で言うのもやけど優秀な方やったから、近大に舞台芸術専攻に入った時点で舞台芸術で生きてくって決めてんねん。だから、就職のタイミングでそんなにどうのこうのっていう思想はもうなかった。 

杉原  なるほど。

松原  あたしは今辞めるのなんかもったいないなって…。始めたとこで、もうちょっとやらないと何もわからないなと思って。匿名劇壇があるんやったらもう少し続けようっていう感じで就活しなかった。

杉原  吉本さんは?

吉本  私は、卒業と同時に劇団に入ったから、ほんとにもう、就職するか劇団に入るかの2択で。でもなんか、ふと、これから先就職して1回も台本も読まずに、舞台にも立たずにっていう人生を想像したときに、ほんとにゾッとしたから。それが決め手で続けようって思った。

石畑  へーー。 

杉原  じゃあもう、福谷さん的にも劇団は続けていくっていう?

福谷  なんか話したっけ?

東   話した話した!在学中石畑とかが入る前、同期だけでやってる時に。なんかの公演終わりに、「俺は、1人になっても匿名劇壇を続けていくけど、それを今のみんなに強制はしない。だから、皆にやっていこうぜ!っていうのは言わないけど、でも、まあ一人は寂しい…。」みたいな。

一同  (爆笑)

松原  かわいいー。

佐々木 ださっ!(笑)

東   だから強制はせえへんけど寂しいで、みたいな話はされてて。

吉本  彼女みたい。

東   その時に、(福谷が)卒業しても続ける意思があんねんやって思ったから、じゃあついていこうみたいな。あたしもだから、今就職を理由にやめたら絶対後悔するなと思ったから。自分より親をどう説得しようの方が大変やったかな。就職しないという選択を、どう受け入れてもらおうかなっていう方がどうしようって悩んだかな。石畑は?

石畑  僕はだからその、この劇団入らんかったら演劇を続けていくことはないやろなぁと思ったっていうのもあるんですけど、普通の、ホントに本心で言いますけど、働くの嫌やって(笑) 

一同  (笑)

石畑  やから、こっちで頑張ってみようって思って、働くっていうのを一旦捨てて、ずっと劇団活動を続けてるって感じですね。


〜フラッシュフィクション公演vol.1『Jerk!!』の話〜


杉原  それで『気持ちいい教育』があって、それが2013年5月。
2013年11月にフラッシュフィクション公演vol.1『Jerk!!』をカフェギャラリーcan tutukuで上演しましたね。

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松原  ここ怒涛やな。

福谷  いやだから若い頃の俺ホンマに優秀じゃない!?

佐々木 まじ書けてるな。

福谷  すげーな。

松原  やりたい欲がすごい。

東   なぁ。

杉原  これも杉原・石畑が出てました。

松原  ほんとだ。

佐々木 そうだね。

福谷  あ、これ石畑結婚式事件?

佐々木 ああ、そうや!

石畑  あれ事件にせんといてほしい(笑)

佐々木 姉の、石畑姉の結婚式事件。

片山  なんですかそれ?

石畑  あの、姉の結婚式と本番日が被ってて。この日はNGですって元々言ってた日に本番が被ってきたから。最終的に1日だけ僕がいない公演があったんです。 だからチラシにも「11月23日は石畑、姉の結婚式のためいません」って書かれてて。

一同  (笑)

石畑  ちゃんと書いてたはず、確か。

吉本  (チラシを見て)あ、ほんまや!

福谷  あ、それ現物あんの?

松原  あるある。

東   あ、ほんまや!書いてる書いてる。

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松原  「23日は姉の結婚式のため石畑達哉は出演致しません。」

福谷  すげーな。

片山  ほんとだ!

杉原  そのカバーを僕と佐々木誠がやりましたね。

佐々木 そう、1日だけね。

松原  石畑の穴を全部埋めてんな。

東   ふくちゃんも少しカバー入った?

福谷  うん。

佐々木 頭おかしなったよな。

杉原  頭おかしなった。

松原  全員の目がおかしなってたもん。

杉原  衣装をどこに置くかとか変えないといけないもんね。 その日1日限定やし。

佐々木 うん。

杉原  大変やったな。

佐々木 完全にレベル上がったもんな、俺ら。

杉原  上がった。

松原  あれは大変や。


東   あれは大変。 普通のやつでも大変やのに。

松原  そう。この公演はほんまに大変やったってイメージ。だって1日4本やってるんやで。

福谷  1日4本やってん!?

松原  4本。

石畑  4回し?

松原  13:30、15:00、17:30、19:00やってる。

東   だから客出しして、即客入れやから…

松原  そうそう。

石畑  客入れ中たしか舞台上に既に役者がいてみたいな…

福谷  だから若干片付け残ってんねんな。

松原  そうそうそう、片付けと準備と。

東   入れ替えと着替えしないとあかんから。

松原  お客さんに見られながらやってた。

佐々木 カーテンコールで福谷がお客様に「私たちは見ての通り、今から片付けと準備をしなきゃいけないので、皆様も各々皆様の世界に帰ってってください。」って(笑)

一同  (笑)

石畑  あーそう言ってたそう言ってた。

松原  「僕たちはここにいますけど」みたいな。

東   言ってた!言ってた!!

石畑  各々の世界に。

佐々木 各々の世界に。「では」言うて。

松原  「片付けます」言うて。(笑)

佐々木 石畑がものっすごい衣装なくしてて。

石畑  あ、でもあれ1回だけよ?

佐々木 1回だけか。

石畑  ズボンがなかってん。

東   え、携帯もなかったやん。

佐々木 あれって本番中?

石畑  あれは、なんか、あの僕確か、杉原からパスしてもらえると思ってて。

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一同  (笑)

杉原  そーそーそー!そう、小道具の携帯。

石畑  だからもう、俺はもらえるもんやと思って。

松原  石畑がずっと杉原に手を出して。

石畑  (手を出して)こうやって。やって、あ、(転換ジングルが)鳴り終わると思って。(芝居に入る仕草)

松原  (笑)諦めた。

石畑  もう諦めて。

福谷  杉原から渡してもらう予定なんてないんよね。

杉原  ない!

一同  (笑)

石畑  頭バグってた。

杉原  着替えてたら石畑が手出しきて、「知らん知らん知らん!!」って。

一同  (笑)

佐々木 映像残ってるんよね、あれが。

松原  この公演は事件が全部映像に残ってる。

佐々木 残ってる。

松原  杉原が取り出した食パンがもう齧ってあるやつとか。

佐々木 金の食パンな(笑)

杉原  あれ、新品の食パンを取り出して食レポするっていうやつなんですけど、取り出したらもう齧られてた。

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佐々木 自分がゲネで齧っとったんやな(笑)

東   すごい勢いで食べたもん。

杉原  バレる前に食べた。

一同  (笑)

佐々木 光の速さで、出した瞬間に口に入れるって。そんな食レポないやん。

松原  めっちゃ面白い。

杉原  それを見てる松原さんがもう笑ってて。

松原  笑ってるねん。かすかに笑ってるのも映像に残っちゃってる。

杉原  残ってますね。

佐々木 笑っちゃう笑っちゃう。

松原  フラッシュフィクションは横で見るからね、出演者が。

東   そう。

松原  あんな失敗されたら笑っちゃうよ。

杉原  シャツ引き裂き事件は?

佐々木 あ、俺の? あの、can tutukuって後ろにドアがあって、その中で着替えてたやん。で、プリセットの時点でそこに ボロボロのシャツを置いとかないとあかんかったけど、もう入った瞬間にどんだけ探してもないのよ。着なあかんもんが。で、白シャツ着てたから、辻褄合わせるために後ろで「ヌアアアアアア!」って言いながら引き裂いて。

福谷  (笑)

松原  辻褄合う?それで(笑)

佐々木 いやもうだから、その次が福谷に殴られて倒れてるみたいなシーンやったから。

松原  あー!なるほど!

東   あ〜!

佐々木 後ろでもう引き裂いて…だからもう、福谷が大変よね。だって、明点して明かりついたら、もう自分で引き裂いたYシャツ着てる俺が倒れてるわけやから。

松原  やばい笑っちゃう…。

佐々木 ほんまごめん!と思いながら。

東   なんか転換の時にも2人が目合って、あ!みたいなんなかった?

佐々木 俺が忘れててん。

松原  出番忘れててん。

佐々木 自分が出なあかん時に俺は、壁に次の作品のタイトルが映ってるんやけど、タイトルを見て、あぁ次これかと思ったら、福谷がちょうど俺のいる下手袖から舞台上に歩き出しながら「え、まこちんもやで?」みたいな顔で見てきて。

福谷  この作品、お前、も、出るねんでって(笑)

佐々木 出る気なかったから、インナーのボロッボロのシャツをシャツinで着てて。

松原  そうそう、めっちゃダサい格好で出てたなぁ。

佐々木 で、何とか転換間に合って座って芝居始まってんけど、お互いもう見られへん。お互いがおもろすぎて(笑) 俺が福谷に、制服の注意をするって言う内容の芝居やのに…。

松原  そうそうそう!

佐々木 「お前が使ってるその服はさ」みたいな。

福谷  え、じゃあ成立してへんやん!

佐々木 そう。「これもね!」って指してる俺の制服はヨレヨレのインナーシャツやねん!もう、ほんまに笑いを堪えるだけで必死やった。

吉本  じゃあアクシデント大賞っていったら『Jerk!!』?

松原  そう、『Jerk!!』が1番。

佐々木 だって12秒喋らへんかったやろ?

東   そう。

松原  あー、東がね。

東   台詞が飛んで。

杉原  へー。

東   舞台ツラでマイクに向かって喋って、私が喋った通りに後ろで役者が動くって作品で。私がずーっと1人で喋って終わるっていう内容なんですけど。なんか言い訳やけど…いつもおらんとこにふくちゃんが立っててん!

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杉原  (笑)

東   喋ってて、こう、ふくちゃんがこっち見てて、「あ、ふくちゃんおるわ」って思った瞬間にポンって飛んで、「ハッ…!」みたいな。マイクもあるから「ハッ…!」って声も入ってて。「ァッ」みたいなこの息遣いも全部入ってて。だからちょっとこの、色っぽいシーンやったから、お客さん的にはそれも演出なんかな?みたいな…(笑)  

松原  いや、なってるかな?(笑)

東   演出かと思ったって言ってくれてたから…! 台詞の真ん中ゴンって抜けて、最後の方だけ言って終わったけど…。もう飛んだ瞬間にふくちゃんが「フッ」って笑ってんのも見えたし。

福谷  笑ってた?

東   笑ってた

松原  余裕やん。

石畑  あの時後ろで寝転んでたんって誠さんやったっけ?

東   そう。あと芝原。後ろの2人も「ハッ」ってなってて。

松原  なんにもできないもんな。

東   逆向いて立ってたら見ながら思い出せたかもとか思ったけど、もう目の前に音響卓とふくちゃんしかおらんかったから。

佐々木 ちょうど芝原が泣いてるってことを言う台詞で東が黙っちゃったから、芝原がいつもより大きめの音で「グスンッグスンッ」ってアピールしてた(笑)

松原  おー、それも気づいてないんや。

東   気づいてない気づいてない。

松原  もう真っ白やもんなぁ。

東   瞳孔バーンって開いたもん自分の。

松原  あの時、もう転換のジングルなるかと思ったけど。

東   ギリギリ鳴らすか鳴らさんかくらいの所で台詞が出たから待ってくれはって。

福谷  出てへんで。

一同  (笑)

松原  実際はそんなに長くないやろうけど、見てるこっちは永遠に感じた。

東   私も永遠に感じた。凄い汗かいたもん。

杉原  それも収録されてる?

佐々木 収録されてる。

石畑  エグいな。

松原  映像すごいな。

東   見たくないわ。

佐々木 石畑の携帯のやつも入ってるしな。

石畑  えっそれも入ってんの?

佐々木 映ってる。諦める瞬間までわかるもん。

一同  (笑)

松原  諦める瞬間が1番面白い。

一同  (笑)

松原  一瞬天を仰ぐねん。で、やたら後ろ向いて芝居するから。

佐々木 で、全くついてない貧乏ゆすりって芝居入れてくんねん。違う芝居やねん。

松原  キレてんねんなもう。

吉本  めっちゃ面白い。(笑)

東   全然知らんかった。着替えてたから見てない。

杉原  でも台詞忘れる系ってこれ以降ない、これっきりですもんね。

松原  あんまりないかも。

東   あっでも『二時間に及ぶ交渉の末』で石畑が裏でふくちゃんに詰められたのは?

石畑  あれは台詞ミスったんじゃなくて、(福谷が)宇宙人の役やったから、見えたらダメなんですよ。なのに一瞬台詞がわからんようになって、パッて見ちゃった。で、もうそっからどうしようも、やりようがない。

福谷  (笑)

佐々木 目あってるんやもんな、見えへん設定やのに。

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一同  (笑)

佐々木 で、『jerk!!』の次は?

杉原  『jerk!』の次4ヶ月後に『ポリアモリーラブアンドコメディ』を芸術創造館でやってますね。これには吉本さんも出演してました。

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吉本  そうです2回目の客演。

松原  まだ客演なんや。

吉本  まだ劇団員じゃないです。

松原  石畑と杉原はいつ入団?

石畑  僕らは『気持ちいい教育』終わりで入団して1発目が『jerk!!』です。

吉本  私は『ポリアモリー』後に入団して。

福谷  石畑と杉原は「劇団員になりました、jerk!!をやりましょう」なんや。

東   大変やなー1発目があれは。

佐々木 結婚式も被ってたしな。

杉原  凄いスパンでやってる。

福谷  凄いね。

松原  たしかに。

杉原  『ポリアモリー』の2ヶ月後に『二時間に及ぶ交渉の末』やってますわ。

福谷  2ヶ月後!?

松原  受賞しちゃったから、やらないといけなかったんだよね。

東   この期間にやってくださいって話やったもんな。ポリアモリーはあれじゃない?帽子事件じゃない?

佐々木 あー帽子ね。

石畑  あー!

杉原  なんか衣装で俺が帽子を被ってるんですよね。それが1回落ちて福谷さんが拾って僕に渡してくれてもう1回被るシーンで。

福谷  いやいやあれハプニングやで。元々落ちる予定ないねん。

杉原  そやったっけ?

福谷  お前の帽子が只々落ちてん。それを俺が優しさで拾ってん。拾って、キャップの後ろのかまぼこ部分あるやん? サイズ調整の。あれが落ちた衝撃で全部取れてたから優しさで、アドリブで全部ピタッとつけて杉原に返してあげてん。ほんならそのサイズ調整が1番小っちゃいとこやったみたいで杉原が頭に乗せたら被られへんねん。

一同  (笑)

福谷  ちょこーんって頭に乗っかってるだけで。

佐々木 コック帽みたいになってたもんな。で1回杉原それを被って、1回取るねん。おかしいから。取ったのにもう1回被んねんそのまま。

石畑  (笑)

佐々木 なおしゃーええのに。

松原  違和感はあんねんな。

佐々木 そう、俺は福谷が拾ったんも見てるし、あいつアドリブでちゃんとやっとるわって。で見た上で、サイズ合ってないのがおもろすぎて。

松原  で、不思議な顔してる杉原の顔がね。

杉原  そう。福谷さん俺が台詞喋ってんのに笑ってるから「なんで!?」ってなって。俺はわからんから。笑ってるやんってなって。そこ真剣なシーンで、パパン!ってカチンコ音入って照明変わって喋る良いシーンやのに。

松原  誰が喋ったん?

福谷  佐々木。

松原  よく喋れたな。

佐々木 ほんまに。

東   それさ、モニターで見てて、男子がほぼ出てて女子は楽屋にいる時で。楽屋では「なんで笑ってるん?」って思ってた。

松原  なんか真剣にやってないなってね。

東   なんなんってなって。

佐々木 いや、真剣にやってた

東   でも楽屋は空気感がわからんやん。その後に私が出て。

吉本  いや違うんですよ。私が舞台の下を張って下からこう「こんにちは」って出てくる。それが女子の1人目の登場なんですよ。で、その時登場したらみんなが普段と全然違う方向向いてて。

福谷  誰も見てないんや。

石畑  みんな舞台奥をみてた。

佐々木 前向かれへん。わろてんねもん。

吉本  で、こんな向きやったっけ顔?ってなって、何があったんやろって疑問だけ残ったままやってました。

佐々木 ほんまに杉原の芝居がその時めっちゃ乗ってて、めっちゃ真剣な顔でいい芝居すればするほど面白くて。もうだって被れてないねんもん帽子が。

杉原  それもしっかりね、残ってるからね。

佐々木 映像残ってる。

松原  残ってるんや。

佐々木 福谷がめっちゃ笑ってる。

福谷  えっ笑ってるの映ってる?

杉原  肘で顔隠してる。

福谷  そうそう、うまいこと編集して、俺その事件以降顔見えへんねん。

一同  (笑)

佐々木 で一瞬全体をパンッて映すんやけど男子全員後ろ向いてんねん。

福谷  (笑)

北村  この時美術家さんを初めて入れたんでしたっけ?

福谷  初めて入れたんかなぁ。

松原  そうかも。今まではニシノ(匿名劇壇舞台監督ニシノトシヒロ)がやってた。

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福谷  ニシノが美術やってたのを竹腰さんにお願いしたんや。『気持ちいい教育』はニシノがやってたんか。だからデカい空間の美術はすでにやってたけど、また違ったこだわりの2階建ての美術を作ってもらったなぁ。

杉原  で2ヶ月後に『二時間に及ぶ交渉の末』を應典院でやった。

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福谷  これが『気持ちいい教育』受賞記念やな。

杉原  同じ劇場でやりましたね。吉本さんは声の出演でしたね。

福谷  これは誘ったけどスケジュールNG?

吉本  えーっと1回就職みたいなことをしちゃって。

杉原  えっそうなん?

吉本  そう。で出られなかったけどこの『二時間に及ぶ交渉の末』を観て、面白すぎてショックで私もう働いてる場合ちゃうわってなって。

福谷  へー

吉本  それで「置いてかれる!」って思って、誰にも相談せずに仕事やめて。そっから舞台に出るようになりました。

松原  この公演がきっかけで舞台に出るようになったんや。

吉本  そう、やりたいんやなーって思って。

福谷  へー、『二時間』再演したいなぁ。

松原  やってて楽しかった。

東   楽しかった。

杉原  楽しかった。なんか最初台本をもらって稽古した時に松原さんが稽古場で言ってて。なんか「この作品が成功しないと匿名劇壇は終わる。」みたいなことを。

松原  えっ?そんな事言った?何それ。

福谷  何それ、節目節目でこわいな。

一同  (笑)

松原  なんかこわいこと言ってるなぁ。

杉原  まだ台本完成してない段階で言ってた。

松原  なんでやろ。なんでか理由言ってた?

杉原  いや言ってない、でもそれだけは覚えてる。

松原  えー、こわっ。

杉原  だから頑張らなアカンなって。

松原  でも失敗はしてないもんな?あれ、結果、成功…?

杉原  これは成功。

松原  そろそろもう1回、なんていうの。良かったねって言える公演が来ないとダメかなと思う時期ではあったかもしれない。のかな?

福谷  そうかだから振り返ると、『jerk!!』も『ポリアモリー』も悪くない作品やねんけど、俺が扱き下ろしてんねんなどっちも。全然面白くないって言ってると思う。

佐々木 言ってると思う。

松原  それいつも言ってる。

一同  (笑)

東   『二時間』は、前ツイッターで再演するならどの作品がいいですかってアンケートを取ったことがあって。その中で1位だった。

一同  へー

東   結構圧倒的に。

松原  この作品って最初配役が決まってなくて、一応みんな一通りやってみたよね。

佐々木 やった。

福谷  へえ?

松原  その方法で配役決めたのって『二時間』くらいやと思う。役が一切決まってない状態からつくった。

北村  揃いの色違いのネクタイをつけてましたね。

佐々木 買いに行ったなあ。

杉原  その色を、そのスーツもとっておいて、後々その人のカラーにしようって決めてた。

石畑  あー。

松原  言ってた言ってたそのときは。

福谷  次の作品ってちなみに?

松原  『悪い癖』。

福谷  じゃあ一瞬でそのプランはやめたんや。

松原  まったくやめてる。みんな自分の色覚えてる?ちゃんと?

杉原  俺パープル。

東   青。

石畑  オレンジ。

福谷  赤。

佐々木 緑。

松原  黄色。

杉原  芝原さんは?

松原  ピンク。

佐々木 『二時間』は別にハプニングとかなかったか。

福谷  座談会は別にハプニング振り返り会じゃないで。

佐々木 楽しい思い出あったっけなと思って。

松原  石畑やろ。ハプニングといえば。

石畑  僕はだから、宇宙人振り向き。あとは、身体固まりながらポケットからハンカチをソロソロと出すシーンで、スーっと出そうとしたら汗かいてたからポケットで球体に固まってて、「…ポンッ」て。

松原  丸いハンカチがポンって。

一同  (笑)

北村  舞台美術は水沼健さんでしたね。

福谷  実は最初水沼さんにラフを渡してる。でも全然違うのが上がってきた。

松原  あたしこの美術好き。

北村  椅子をめっちゃ作らないといけなくて、僕なぜか劇団員でもないのにF館(近畿大学の舞台美術製作室)で作らされた。

佐々木 建て込みに水沼さん来たの覚えてる? みんながずっと「水沼さんこんな感じです」「上はこうなってます」って案内してて。そのとき「まだ固まってないところがあるので、後ろの方に絶対行かないでください」って再三注意されてたのに、勝手に後ろのほうにいって、勝手に登って、床に落ちていって「ああぁぁあぁあぁ」って後ろに消えていった。

一同  (笑)

佐々木 なんで聞いてないん。って思った。

松原  振り返ると匿名劇壇って高さのある美術が多いよね。

杉原  ここまではみんな学生ですか?

福谷  いやいやいやいや。

東   もう全員卒業してる。

杉原  俺も?

東   俺も。(笑)

吉本  2010年? 5月。

杉原  それからちょうど1年間公演がなくて、次が『悪い癖』。

福谷  ええ、ここから1年空くの?

松原  なんでやろね。

福谷  全然覚えてないぞ。

石畑  『奇跡と暴力と沈黙』みたいなのはやってました?

東   本公演はやってないけど、短編はなにかやってた。

松原  たぶんこのころからみんな匿名劇壇以外の公演にも出始めて、外部に出演する機会が増えた。

東   揃わないみたいな?

北村  リンクス、ゲートユース、30×30。

福谷  ああ、じゃあイベント出演をしてたってことか。

杉原  『悪い癖』は1回目アイホールで上演された。再演されてるからかわからないけど、1回目の記憶が全然なくて。どんなふうに稽古して、どんなふうな本番を迎えたか全く覚えてないんですけど。

佐々木 それ絶対記憶消してるわ。『悪い癖』の宣伝も兼ねて、ABC中之島春の文化祭で『悪い癖』の冒頭を上演してる。

杉原  ああ…。消してたな。

佐々木 その本番でラップを忘れて叫んだやんか。

松原  台詞全部飛ばして。

杉原  その日俺の仕事は、マイクを持ってラップをするだけやったんですよね。

松原  その1個だけ。

杉原  その歌詞がぶっとんで、「ワーッ」って叫んで。

松原  ABCホールのピンスポ浴びながら、「ワーッ」ってな。

一同  (笑)

杉原  あー、記憶から消してましたわ。

東   その公演で吉本加入やね。1発目。

吉本  でもその前に2回出てるから、そんなに1発目っていう印象はなかった。

松原  加入の時にガストやっけ、匿名劇壇のみんなが集まった。

東   あー、集まった。

松原  匿名劇壇の劇団員が集まってたら、あこちゃんがツカツカツカって歩いてきて。

吉本  ツカツカツカって。(笑)

松原  そしたらふくちゃんが「入ったから」って言った。めっちゃ覚えてる。

東   そうそう、事後報告やってんな。

松原  びっくりして。あこちゃんだけ事後報告やったから。

吉本  あたしは、福谷さんから「メンバーにはあこちゃんのことも話してあるし。」って聞いてた。前作で使用した小道具とか衣装を返すついでに顔合わせしようっていう話で。小道具ありがとうございましたって返し回り終えて、そしたら周りのみんなが「で、なんでまだおるん?」みたいな、ふんわりそんな感じがあって。あたしも「あれなんかこれおかしいぞ?」と思って。そしたら福谷さんも「なんかこれおかしいぞ」っていう顔してて。

一同  (笑)

松原  全員が不思議な顔してる。

吉本  だからあたし地獄でしたもん。

松原  ふくちゃんは「言ってなかったっけ?」って言ってた。

東   そうそう。

佐々木 俺は聞いてた。

松原  何人かには言ってて…。

福谷  俺ホンマに言ってなかったっけ?

東   言ってない。ほんまにびっくりした。

福谷  雰囲気とかは? あこちゃん入れたいねんとかは?

松原  入れたいとかは言ってた。良いと思ってるとか。

東   でも決まったとかは。

松原  「入ったから。」って言われて。あこちゃんやったから良かったけど、この先全然知らん人も「入ったから。」って言われたりするのかなと思って。だからそのあと会議になった。入れる前にはちゃんと言いましょうって。だからあこちゃんはほんまにそのとき可哀想。(笑)

吉本  その日はすぐに帰りました。(笑)

東   劇団員にも決定権を、と。

松原  このときから情報共有をちゃんとするように意識し出したよね。

東   劇団としてこういうことはちゃんと決めて行こうというルールができつつありましたね。

杉原  一旦、換気しましょうか。

パート2に続く


舞台写真撮影 堀川高志、河西沙織